信じてるよ!JR九州。日田彦山線の復旧と運行継続を。

2019-04-10

JR博多駅

沿線住民の願いはついに叶いませんでした。
2017年の九州北部豪雨で被災し不通となっているJR日田彦山線は復旧されず、バス高速輸送システム(BRT)で代替されることが本決まりとなったのです。

地元住民を見捨てたJR九州と小川知事

2017年の九州北部豪雨で被災し、添田―夜明間が未だに不通となっているJR日田彦山線。

「日田彦山線は我々の宝。JR九州はインフラ企業の責任を果たしてほしい」

昨年8月31日に開催された、鉄道での復旧を求める住民決起大会での代表者発言です。

しかしこの願いは叶いませんでした。

福岡県の小川洋知事は鉄道の復旧を諦め、バス高速輸送システム(BRT)を導入すると沿線の東峰村に伝えたのです。

東峰村は態度を保留しましたが、最後の頼みの綱であった小川知事から見捨てられた形であり、BRT案で決着することは間違いありません。

小川知事は東峰村の渋谷村長を訪ね「力不足で申し訳ない」と陳謝したそうですが、まさに力不足、何のための県民代表なのでしょう。

今回の新型コロナウイルス対応で、できる知事、だめな知事が明らかになってきましたが、残念ながら福岡県の小川知事は後者かも知れません。

また、JR九州は鉄道での復旧という本来の責任をどうして放棄したのでしょう。

鉄道マンとしての心意気はどこにいってしまったのでしょう。

この記事では、JR九州に違和感を抱く理由を、過去にさかのぼって探ってみます。

国鉄分割民営化で1987年4月に誕生したJR九州。しかし民営化は名ばかり

国鉄時代の特急列車

JR北海道、東日本、東海、西日本、四国、九州、貨物のJR7社が、1987年(昭和62年)4月1日に発足しました。

もともとは国鉄、つまり日本国有鉄道であったものを、地域ごとに分割し民営化したわけです。

しかし、JR東日本、東海、西日本の「本州3社」は乗客も多く鉄道事業の売上も見込めますが、JR北海道、四国、九州の「三島会社」の鉄道事業は赤字。

そこで、国鉄の分割民営化に際して特例が設けられたのです。

本州3社には国鉄時代の債務を一部承継させるが、三島会社は免除。

それどころか、経営安定基金という名目で三島会社には営業損失を補填する金が与えられました。

それらはすべて税金。国民が納めた金です。

JR九州に与えられた経営安定基金は3,877億円。この金の運用益で、鉄道事業は赤字でも会社として存続することができました。

つまり、民営化なんて名ばかりで、JR九州の実態は「国鉄九州支社だった」と言う方が正しいでしょう。

社会インフラとして、国民、地域住民の移動手段を保障していましたが、決して、国民に対し偉そうなことを言える立場ではなかったはずです。

借りた金を返さず上場を果たしたJR九州。鉄道会社の心意気はどこへ?

東京証券取引所

そんなJR九州が、2016年10月25日に東京証券取引所1部に上場を果たしました。

JR北海道、四国という残りの三島会社がいまだに経営に苦労していることを考えると、JR九州の上場は大変立派なことでしょう。

ところが、ここで多くの人が驚き、納得できないことが起きます。

それは、経営安定基金として与えられた3,877億円を国へ返還せず、新幹線使用料の一括返済などに充てたことです。

経営安定基金は税金、国民が納めた金。それを上場する会社が国に返納しないなんて考えられないこと。これではまともな企業競争はできません。

また、JR九州は上場前の会計処理で、2,824億円の鉄道事業固定資産を中心とした多額の減損損失を一括して計上しました。

つまり、既存の鉄道資産は儲からない、金の回収が見込めないと判断し「損失」として切り捨てたわけです。

これは「儲からない既存路線は維持しない」と宣言したようなもので、社会インフラの重要な担い手である鉄道会社としては、絶対にやってはいけないことでした。

経営安定基金という国民の金で生き延びておきながら、国民の足を守らないことは許されないことです。

社会インフラとして国民、地域住民の移動手段を保障するという鉄道会社の原点、心意気を無くしてしまったのでしょうか。

非鉄道事業が絶好調のJR九州。駅ビルは拡張しても被災路線は見捨てる?

被災した線路

売上高 438,500百万円、営業利益 61,900百万円。

JR九州のホームページに掲載されている2019年3月期の連結業績予想です。前年度から売上高が4千億円を超え、6百億円を超える利益も。

現在の博多駅ビルは2011年3月に開業しましたが、「アミュプラザ博多」などの商業施設が好調で、大きな売上と利益を生み出しています。

「福岡の商業の中心地は天神」という長い間の常識を、JR九州、博多駅ビルが完全に変えてしまったことを、地元住民として確かに感じます。

また、駅周辺の土地を利用した分譲、賃貸マンションも大人気。すっかり非鉄道事業で食べていく会社に変身してしまいました。

たまに鉄道に関するニュースを見れば、クルーズトレイン「ななつ星」などの観光列車に関することが多く、海外の富裕層を相手にこちらも良い商売を続けているようです。

そんなJR九州が、博多駅ビルのさらなる拡張を検討しています。店舗やオフィスでの活用で鉄道事業以外の収入をさらに増やし、利用者の利便性を高めるのが狙い。

赤字に苦しんでいた会社とは思えない、大変立派な業績であり、まさに今絶好調の九州を代表する大企業と言えるでしょう。

その絶好調企業のトップである青柳社長から、被災地の関係自治体に放たれた次の言葉。

『日田彦山線を復旧する条件は、年間1億6,000万円を自治体が負担すること』

上場し、完全民営化となり利益を追求することは当然の考えでしょう。ただし、それは社会インフラ維持の使命を全うすることが大前提ではないでしょうか。

鉄道が大切であることを一番知っているJR九州。路線復旧維持を信じていたのに

誠実な態度

上場時のインタビューで、地方路線の維持について聞かれたJR九州の青柳社長は、次のように答えました。

『鉄道網が維持できなければ、我々の力は半減する。沿線にマンションや商業施設を建設し、沿線人口を増やす取り組みを進めたい』

しかし、日田彦山線の復旧協議を見る限り、「維持する鉄道網は儲かる路線だけ」という考え方が見え隠れしています。

1987年に発足以来、様々な形で普通の民間企業とは異なる支援、扱いを享受してきたはずのJR九州。

それは、鉄道という一番重要で維持が大変な社会インフラを、責任を持って守っていく会社に与えられた特権です。

そして、その大切な仕事を遂行する鉄道マンに対しても、国民、地域住民は尊敬の気持ちを抱いています。

会社の利益などとはまったく異なる次元の、とても崇高な使命。

大企業は数多くあるにしても、そんな使命を持てるのは鉄道会社だけと言っても過言ではないでしょう。

道路はどんなところにも通っているので、バス路線というものは、いつでも変えたり止めたりすることができる。

しかし、鉄道が敷かれれば人々の心に「永久に残るもの」という安心感が生まれ、そこで生きよう、その地域を自分達の「居場所」として繁栄させようとの考えが生まれるのです。

このことを一番わかっているのは、間違いなくJR九州そのものです。

青柳社長のインタビュー通り、JR九州が鉄道路線を維持することで沿線を元気にして人を増やす。

そのためには目先の利益ではなく、実直に社会インフラの維持に努めるべき。

たとえそれが赤字路線であっても、安易にバス高速輸送システムへ切り替えてはならないのです。

きっと近いうちにJR九州青柳社長からこんな嬉しい発表があると信じていました。

『日田彦山線の完全復旧と路線継続をJR九州が責任を持って行う!』

本当に残念です。