北方領土2島返還交渉。米国基地進出も断れない日本は米国とロシアの板挟み

2018-11-17

公園の道路に書かれた「北方領土は日本固有の領土」

最近になって北方領土返還の話がまた盛り上がってますね。何十年も前からの課題ですが、なぜ今になってロシアとの駆け引きが活発になっているのか不思議ですよね。

この投稿ではそんな疑問を解消し、北方領土返還交渉の「現実」について知ることができます。

なぜなら、安倍首相が国内で説明している内容と「現実」がかけ離れていることを簡単に説明しているからです。

安倍首相の「業績」を残すために何らかの落とし所は作るかも知れませんが、実態は4島返還どころか、2島の返還も実現することはできないでしょう。

この投稿を読み終えれば、北方領土返還交渉について今後関心を持ってウォッチできるはずです。

「北方領土を返せ!」

私が7歳のとき、ローカルバスの窓にそんなポスターが貼られていたのを覚えています。

子供の頃から、北方4島(国後、択捉、歯舞、色丹)は、戦後のどさくさに紛れソ連が不法占拠したもので、本当は日本の領土。返還されるのは当然だと聞かされてきました。

バスのポスターを見て、近いうちに北方4島は日本に返還されると思ったものです。

しかし、あれからすでに50年が経ち、いまだに1島も返還されていません。

それどころか、国後、択捉には約1万4千人のロシア人が暮らし、新型地対艦ミサイルの配備、軍事施設の建設も進んでいます。

すでに完全に「ロシアの領土」なのです。4島返還なんて、叶うはずがない夢になってしまいました。

そんな中、「2島先行返還で交渉」というニュースが流れてきたのです。

いったい日本政府は、どんな交渉を行うつもりでしょう。そして、それは成功するものでしょうか。

北方領土の2島先行返還交渉とは?

1956年に日本と当時のソ連で共同宣言を締結しました。

日本が返還を求めた北方4島のうち、面積が大きな国後、択捉の帰属問題について合意できなかったため、平和条約の締結を見送り、共同宣言で外交関係を回復したのです。

その宣言内容は、平和条約交渉を継続し、条約締結後にソ連が面積の小さな歯舞、色丹を日本に引き渡すというものでした。

今回、安倍首相が持ち出した「2島返還交渉」とは、この1956年の共同宣言に基づいています。

ロシアのプーチン大統領は今年9月に、前提条件なしでの平和条約締結を提案しましたが、安倍首相の回答は2島返還の前提条件は付けるというもの。

一見すると、プーチン大統領に「NO!」を示し、立派な交渉を行っているようにも感じますが、実はそうではありません。

もともとの日本の意志は「(4島すべての)北方領土を返せ!」。

つまり、プーチン大統領から「前提なし」とふっかけられて、「じゃ、2島で」と応じてしまったわけで、交渉はロシア側の勝利。

そう思われたくない安倍首相は、「2島返還交渉」の間に「先行」という言葉を入れて、歯舞、色丹の2島返還で終わらせず、国後、択捉についても継続して交渉する「雰囲気」を出しています。

しかし、ロシア側は最大で2島と考えているわけで、交渉継続なんてありえない話です。

2島返還も実は困難な話かも?

このまま2島返還交渉が上手く行き、歯舞、色丹が日本に引き渡されるかというと、そんなに簡単ではありません。

歯舞、色丹が日本の領土になった場合、日米安全保障条約に基づき、島に米軍施設が置かれる可能性があるからです。

日米安全保障条約の第六条に以下の記載があります。

日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。

日本の安全、国際平和のために、米軍は日本に施設を置ける。

この条約内容をもとに、ロシアでは引き渡し後の島や周辺海域に米軍の施設や艦船が進出すると考えています。当然、米国も中国の軍事的脅威を考慮し、ロシアの想定通りの行動をとるでしょう。

これを否定しているのは、日本の安倍首相だけです。

米軍進出が判っていて、ロシアが2島を返還するはずがありません。

つまり、4島どころか、2島返還も実は夢物語かも知れないのです。

北方領土ロシアは返す気がない。日本は米国との交渉を優先すべきでは?

安倍首相は自分の任期中に、五輪招致に加え、憲法改正、北方領土返還など、歴史に残る業績をあげたいのかも知れません。

しかし、ロシアと米国両方の顔色をうかがうような「交渉」では、実現できるはずがないのです。

今回の2島返還でも、やはり日米安全保障条約の話が出てきます。ここを見直せない限り、日本には正常な交渉権がないということでしょう。

沖縄における米軍基地問題も同じです。

安倍首相は、ロシアとの北方領土返還交渉を行う前に、米国との安全保障条約見直しに、全力を注ぐべきではないでしょうか。

もし、そこで成果を出せたなら、少しは歴史に名を残せるかも知れませんよね。