リストラが続いたNECと富士通。復活できるのはNECか?

2019-02-20

業績悪化

同業他社として競ってきたNECと富士通。最近では同じ時期に大規模なリストラを行い、まさに「似た者同士」という感じ。いったい生き残れるのはどちらの会社なのでしょう。
この記事ではNECについて、決算状況、これまでの問題点、今後の展望などをまとめます。

NEC決算概要


2019年度通期決算

5月12日に2019年度通期決算が発表されました。


目標売上高29,500億円、営業利益1,100億円に対し、売上高30,952億円、営業利益1,276億円と両指標とも達成。


Windows7サポート終了に伴うパソコンの買い替え特需、5G通信の固定網整備などの理由もありますが、やはり自治体、医療、航空宇宙・防衛、金融業など多くの分野での活発なIT投資が増収増益に結びついたと言えるでしょう。


売上高に関しては「2020中期経営計画」で掲げた3兆円を前倒しで達成したことになります。


また、今回の新型コロナウイルスの感染拡大を受け、世の中ではデジタル化、リモート化、オンライン化、省人化、タッチレス化といった変化が急速に進んでいます。


本来のNECの強みが活かせれば、世の中の変化はNECの業績向上を後押しすることでしょう。


いよいよ「NEC復活」が現実のものとなりそうです。


2019年度第3四半期決算

売上高7,266億円、営業利益311億円。


第3四半期も対売上収益比率4.3%と健闘しています。


2019年度通期の目標である売上高29,500億円、営業利益1,100億円も視界に入ってきました。


決算資料内でも「19年度通期予想に対する進捗は順調」としており期待できそうです。


2019年度の目標を達成し、「2020中期経営計画」で掲げた売上高3兆円、営業利益1,500億円の実現に弾みをつけたいところです。


2019年度第2四半期決算

売上高7,951億円、営業利益435億円。


第1四半期は売上高6,539億円、営業利益54億円と対売上収益比率は0.8%しかありませんでしたが、第2四半期は5.5%と大きく改善しています。


上期全体でも売上高14,490億円、営業利益469億円という実績であり、2019年度通期の目標である売上高29,500億円が達成できそうな勢い。


しかし、通期営業利益1,100億円の達成は微妙ですね。


実は決算資料にも上期の構造改革効果として特別転進支援施策、つまり希望退職の募集をあげています。


この構造改革効果はいつまで有効なのか?これ以上の希望退職募集は必要ないのか?


NECの復活は本物か、これからの半年で答えが出そうです。


2019年度第1四半期決算

売上高6,539億円、営業利益54億円。


前年同期と比較して売上は微増ですが、営業利益は-107億円から54億円と161億円増となりました。


この状況を踏まえ、2019年度通期予想は売上高2兆9,500億円、営業利益1,100億円と変更無しですが、不安材料がないとは言えません。


それは「NECのリストラは完結したのか?」ということです。


同業他社を含めて45才以上の社員を中心とした早期退職の流れは止まったように見えません。本当にNECでは大規模リストラが今後発生しないのでしょうか?


昨年度に利益を伸ばせなかった最大の要因を、NECでは大規模リストラなどの構造改革費用としています。


もし今年度にも大規模リストラが発生した場合、2019年度通期予想の達成、および「2020中期経営計画」で掲げた売上高3兆円、営業利益1,500億円の達成は非現実的なものとなります。


今後ともリストラ関連のニュースに注目する必要があるでしょう。

リストラでNECは復活?

一昨年の秋「富士通5,000人職種転換」という大きなニュースがありました。

「職種転換?」と違和感がありましたが、やはり5,000人の6割にあたる2,850人が職種転換できず、3月末で退職という結果に。

最初から「3,000人の早期退職募集」とした方が、素直だった気もします。

富士通のリストラに関する記事を見ながら、「あれっ、ところでNECはどうなったの?」と思った人も多いことでしょう。

旧総合電機メーカー、すでに家電からは撤退しているので、情報・通信機器メーカーと呼ばれる似た者同士のNECと富士通。

随分前から業績悪化の話が出ていたのはNECの方でした。

この記事では「NECはどうなったの?」という疑問に答えると同時に、NECが抱える問題点と今後の展望について明らかにしていきます。

リストラ前は「立派な」総合電機メーカーだったNEC

折りたたみ携帯

朝刊に「総合電機、解体への歩み」という記事を見つけました。

昔はNECでも家電を作り、総合電機メーカーとして手広くやってました。

ただし、家電販売店に行くと「良い製品なら松下、日立。安いのはNEC、三洋ね」と言われるくらい、あまり良い評判は無かったような。

目立っていたのは、やはりパソコンと携帯電話(ガラケー)でしょう。

PC-98というNECオリジナルパソコンは、一時期国内シェアの半分以上を占めていました。

それから折りたたみ式携帯電話でも、NECの機種が一番人気でしたね。

「バザールでござーる」なんてテレビCMも流行って、理系大学生の就職先人気ナンバーワンにもなっていたと思います。

売上高も18年前の2000年度までは5兆円ありました。

まさに立派な総合電機メーカーだったわけです。

通信機器を製造する子会社を閉鎖したNEC

しかし新聞記事には、今のNECの生々しい現実が書かれていました。

NECの子会社で、通信機器を製造するNECプラットフォームズの一関事業所が閉鎖されました。

これはNECの歴史を考えると、とても大きな出来事。

なぜなら、もともとNECは通信に強い会社として発展してきたからです。

通信機器工場を閉鎖するなんて、NECプラットフォームズの従業員としては信じられない発表だったことでしょう。

NECは他の工場への移籍も考慮しているようですが、家の事情で岩手県一関市を離れることができない従業員も多く、退職するしかない人も。

従業員の声も新聞に載っていました。

従業員は辞めるのに役員は責任を取らないのか

通信機器事業と同じく、永く続けた照明事業からも撤退するNEC。

一連のリストラにより国内で3,000人の従業員を削減しました。

これに対し経営陣は、新野隆社長と遠藤信博会長が報酬の20%を6ヶ月、46人の執行役員全員が10%を6ヶ月自主返上しただけなのです。

退職するしかないNECプラットフォームズ従業員の声は、もっともな話ですよね。

「身を切る改革」ができず、変われなかったNEC

改革

実は、さっき書いた「新野隆社長と遠藤信博会長・・・46人の執行役員」に、NECが復活できない最大の原因があります。

遠藤氏は2010年4月にNECの社長となり、2016年4月からは1歳年下で副社長だった新野氏に社長を任せ、みずからは会長に就きました。

遠藤氏が社長に就いた2010年度の売上高は3兆1千億円、最後の2015年度は2兆8千億円。

たしかに、遠藤氏が社長に就く前の10年間で、売上高は5兆円から3兆円に減っていました。

また2008年9月にはリーマン・ショックが起き、大手電気メーカーは全滅しました。

しかし、遠藤氏が社長であった6年間で、NECの業績をまったく改善できなかったことは事実なのです。

それなのに、遠藤氏は代表取締役会長として会社に残り、執行役員も46人。

また、遠藤氏と行動を共にし、しかも1歳しか年が違わない新野氏が新社長に就いたことも「変われないNEC」を印象づけました。

まるで「身を切る改革」と言い続けながら、議員定数を減らせない政治家のよう。

変われないから、NECは復活できないのです。

外部からの血を入れ「変化に挑戦」するNEC新野社長

挑戦

そんな「変われないNEC」の新野社長がついに動きました。

GEジャパンの社長だった熊谷昭彦氏を副社長として招聘したのです。

外部から招聘した人材を要職に置くのは、まったく前例がありません。

また、新設した「カルチャー変革本部」に、日本マイクロソフトで人事部門責任者だった佐藤千佳氏を起用。

そういった意味でも、少し「変わったNEC」の現れかも知れません。

今後、この二人が活躍してNECを変える力になれるのか?

それとも、「変われないNEC」の圧力に負けて、二人は去ってしまうのか?

いずれにしても、今まで誰も出来なかった人事に新野社長が挑戦したことは、高く評価できると思います。

今後の人事にも注目です。

NECのこれから。「セーフティ領域」が最後の希望?

顔認証技術

NECも富士通同様、それ以上に苦しい状況にありますね。

しかし、そんなNECにも少しだけ明るい光がさしています。

生体認証、とくに顔認証に関してNECは世界一の技術を持っています。

すでに世界の空港などにも導入されており、大衆の中から危険人物を見つけ出すことも可能な技術です。

この「セーフティ領域 」こそ、NECが他社との差別化を図れ、今後の発展が見込めるものであることは間違いありません。

遠い昔から指紋認証などの技術を培ってきたNEC。技術力があることは確かです。

あとは、それを上手に活かせるか。

新野社長をはじめ経営陣の手腕にかかっています。

いずれにしても、「2020中期経営計画」で掲げた数値目標である、売上高3兆円、営業利益1,500億円の達成は絶対条件でしょう。

売上、利益目標を達成できず、計画で達成できたのは3,000人のリストラだけでは許されないのです。

もし達成できなければ、それはNECが市場から退場する時かも知れません。

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